箱物筐体用:タテヨコ伸縮上下パッド
今回はハイエンドなステレオ機器メーカー様からのご依頼事例です。製品画像の掲載はNGとのことで、写真ではグレーのフォームを仮に配置していますが、実際には立方体に近い箱物製品の緩衝包装設計となります。
これまでは外装、内装をともに段ボールでまかなわれていましたが、ハイエンド機ということで輸送時の衝撃による破損や初期不良を最小限に抑えるため、より衝撃吸収性能の高いフォーム材への切り替えをご希望でした。但し条件があり、①できるだけコストを抑えつつ、②保管時のスペースを小さく済ませたい、とのこと。
当初はよくある折り畳み式のパッド(下図A参照)をご提案させて頂きましたが、その後追加のご要望は多岐にわたり…
課題1・2を受けた当初ご提案内容と追加のご要望(課題3)
課題1: 高単価な音響機器のため緩衝性能は絶対条件。
課題2:「且つ」保管スペース削減。
これまで使用されていた段ボールは、環境性能の面では非常に優れた素材ですが、精密機器や高価な製品の輸送では、緩衝性能においてはどうしても劣ります。今回は、非常に高価な音響機器ということで、トップクラスの緩衝性能を誇るサンテックフォームの上下パッドをご提案。なおかつ、外部梱包委託先での保管スペース削減を狙い、パッドの「足」の部分を折り畳み式に。弊社でもよくご提案しているパターンでの設計をさせて頂きました。
課題3:「且つ」環境負荷の低減。
しかしその後、それまでの「緩衝性能」「保管スペース削減」に加えて、やはり「環境性能」もしっかり担保したい、とのご要望をお客様より頂きました。廃プラ問題や、バーゼル法などといった直近のトピックを受けて、近年ではますますこういった、「緩衝材としての基本スペックは保ちつつ、環境性能も担保したい」という、いわばもともとトレードオフの関係にある複数のニーズが寄せられるケースが増えています。
追加のご要望(課題3)を受けた改善案
樹脂使用量を極限まで減らした第二案
この追加のご要望にお応えするべく、当社では社内での落下試験と数度の設計調整を繰り返し、緩衝性能と減プラを両立させる第二案をご用意。体積、樹脂使用量を第一案の半分以下に抑制することに成功しました。これは実際には、輸送時の容積削減にもつながり、輸送上のカーボンオフセットにも寄与することになります。
効果測定
改善効果 | |
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緩衝性能 | 従来品より大幅に向上 |
保管スペース | 52.9%削減 |
樹脂使用量 | 52.9%削減 |
設計技術担当者からのコメント
当初のご要望に対しては、当社が得意としている従来型の仕様でご提案を進めました。その後、樹脂量を極限まで減らすご要望を頂き、蛇腹構造が候補として浮かびました。但し、こうした引き伸ばす構造の欠点として、梱包時の作業性が下がることが挙げられます。試作品で複数回の社内検討を行い、無理なく引き伸ばすことができ、かつ、使用材料を大きく削減できる、ちょうど良いサイズのサンプルで再提案させて頂いた所、高評価を頂き、採用に至りました。