経営と現場に役立つ「生出マネジメントシステム」

生出・JQA・ニュートンの3者対談

2015年5月、弊社は認証機関である一般財団法人日本品質保証機構(JQA)様において、ISO14001(環境)、9001(品質)、22301(事業継続)の3規格統合審査をうけ、結果、統合審査による不適合は一つもなく審査を終了しました。特に重点施策とクレームを出さない教育等でGood Pointを5件頂きました。
2014年春、ISOを“もっと経営と現場に役立つ本来のマネジメントシステム”へ変えるべく動き出したこの活動は、一つの節目を迎えました。
図らずも環境、品質の国際規格の改定を迎える年に、ISO統合マネジメントシステムの先進事例となった今回の取組みについて、弊社代表生出と西島、審査を担当したJQA様、ISOマネジメントシステムの改善に携わったニュートン・コンサルティングの3者による振り返りを行いました。

代表取締役社長
生出 治

生出:

改めまして、3規格統合審査のご対応、ありがとうございます。審査所見は拝見いたしましたが、今回の審査において、今後の改善点などを改めてご指摘いただければと思います。

また、ISOを経営の役に立つものに変えよう、審査のためだけの準備は最小限にとどめ、審査によって不適合がでれば、それは改善の機会と捉えようというニュートンさんのご支援のもと、進めてまいりましたが、そういった内容についても、率直なご感想をいただければと思います。

今回は、多少準備はあった?

西島: そうですね、多少ですね(笑)
一同: (笑い)
生出:

今まではとにかく規格ありきで、その下に自分たちの活動があるというように感じておりました。規格の要求事項に合わせたマニュアルを作り、そのマニュアルは、実際の業務とはかけ離れていました。そうした反省点を踏まえて、経営の役に立つもの、業務に直結したものに変えていこうと、昨年の4月からニュートンさんのご支援をいただいておりました。

ポイントの一つは、経営戦略や達成目標、自分たちがやるべき業務とは何かということを第一に考えるということ、及び本来のあるべき姿に戻すことです。マネジメントからISO規格をみて、ISOは改善点に気づくためのツールとしていく。このことによってマネジメントシステムの二重化というものは解消できたと思っています。

もう一つは、現場が自らつくるものに変えました。今までのISO推進体制は、私が統括責任者、西島が管理責任者となり、管理責任者が現場に指示を出してISOを管理していました。そうすると現場の人間は、別の部署から言われたことをやっているという認識となり、どうしても主体性が持てません。

― 現場が自らつくり、文書維持管理の作業量を大幅に削減

生出:

ISO規格の要求事項に従って作成した、規格と同じ章立てのQMS、EMS、BCMSマニュアルは、現場で使っていないという判断で廃止することにしました。また、ISO認証取得のために作ったチェックシートや記録文書についても、現場が使っていないものは全て廃止しました。

但し、ニュートンさんのご支援の中で、これだけはきちんとやろうということがありました。
「事業方針書」「全社共通ルール」「業務マニュアル」、そして年間の「運用計画書」をつくって、いつどこで何を誰が実行していくか管理をしていこうというものです。

「事業方針書」は従来あるものに、品質、環境、事業継続の方針や目標、MS管理体制を追加。「全社共通ルール」は従来からあった(目標管理、文書管理、内部監査等)を再編成しました。
「業務マニュアル」は従来からあった業務フロー図を見直して、業務ごとの主要管理指標を明確化、そして実際に使っているチェックシート、記録文書との紐付けを行います。
規定、手順書については、本当に業務に役立つように、現状に即した流れに作り変え、同時に文書を極力省き、分かり易いようにフロー図に変えました。

そうすると審査においても、自分たちが日常的に使っているものだから自信を持って、審査員の方に対応することができます。現場主導で自分たちが作りこむ、だから自分たちの役に立つものにできたという大きな成果が生まれました。

ISO管理責任者
品質保証グループ 課長
西島 文則

西島:

経営に役立つ生出マネジメントシステム、OMSと言っているのですが、一年前と一年後の姿です。

今回の取組の結果としては、3規格のISO文書量は従前584頁から166頁となり71パーセントの削減、文書維持管理の作業量は従前760時間から80時間となり89パーセントの削減となりました。
正確に時間をはかっていた訳ではないのですけど(笑)

全社ルール・業務プロセスチャート

JQA 理事 福井 安広氏

福井(JQA理事): この写真はすごいですね。こんな風に変わったのですね。現場の人たち主導でプロセスチャートをつくって、対応したということですが、皆さんはどのように感想をお持ちになっていましたか。
西島: 今までは、私が審査対応をしてきたのですが、今回はやはり現場の皆が、「自分たちの業務の内容は自分たちが説明しないと」、と自発的に対応してくれました。
福井: 私たちが行っている審査というのは、外部からの評価であるので、それが上手くいったのであれば良かったです。
生出: 今回はまず、業務の洗い出しからはじめて、本当に必要な文書はなにかという議論をはじめ、そこからスタートさせたので、時間もかかりましたが得られるものも大きかったです。

JQA 審査員 中村 春雄氏

中村(JQA): 審査では、現場の方に嬉しそうに管理方法を話していただき、積極的に色々見せていただきました。そういう意味では、やらされ感というものは全く感じなかったですね。
西島:

先日の審査では、プロセスと管理指標の適切な連動と管理指標の達成のためのプロセスと活動の見える化の推進というご指導を受けて、「なるほどなあ」と改善点を実感しました。やはり、自分たちだけでは気づけなかった点で、審査のおかげだと感じています。グッドポイントも5点ほどいただいたことも大きな励みになりました。

今後は、製品やサービスそのものの質だけではなく、製品・サービスが生み出される工程の質を意識したものに変えていこうと、そのためにISOをツールとして利用していこうという意識に変わりました。

福井: 規格の改定は一つのエポックですので、そこをうまく利用していただけたのは嬉しいですね。私たちにとっても先進的な事例になったと思います。同じように悩んでいる企業はたくさんあると思います。

― マネジメントシステムとは、最終的には企業風土を育てていくこと

ニュートン・コンサルティング
英 嘉明氏

英(ニュートン): 特に経営者の背中を押してあげることが重要だと思います。現場の担当が、どんなに矛盾を感じていたとしても、やはり全社をあげて業務改善を行い、マネジメントシステムを再構築するというのは、経営者の判断にゆだねられるものです。
西島: 最初は、我々もどうしてよいか分からなかったです。あまりにも書類業務が多くて、このままではいけないと思いつつも、実際、何をどう削っていけばよいか分からなかったですよ。
中村:

「経営と現場に役立つマネジメントシステム」ということですが、やはりISO管理責任者という役割は非常に重要ですよ。経営側が見ている視野の広さと現場が抱えている局所的だけど重要な問題には、ギャップが存在します。それを上手く翻訳してお互いの潤滑油となる存在というものは必要ですし、重要です。

感心したのが、プロセスチャートに外部からのインプットと内部からのアウトプットが表示されているのがよくできているなあと思いました。これらがはっきりしているので、部署間がどのように連携しているのかわかるようになっています。

設備の導入を例に考えると、設備が破損したときのことを考えれば事業継続につながり、製品に不良品がでるようになったら品質につながり、設備による環境負荷を考えたら環境につながる。そういう意味で全体的な関わり具合をおさえるのが重要かなと思いました。さらに、そういう視点が強化されると一段とよくなるのかなと思いました。

西島: 現場では行っていますが、もっと見えるような仕組みに落とすべきなのかもしれないですね。
生出: 現在は、各部門で作ったフローをつなげて、関連するヨコの部門とどう連携しながら仕事を進めていくのか、他部門との協力関係をどう創り出して、より大きな付加価値を生むプロセスをどう作るかといった作業に入っています。
こうした見える化によって、社内の問題点を浮き彫りにすることで、問題の早期解決や業務間のムダの排除を速やかに実行できるようになるなど、体質強化が進められるようになっています。

JQA 審査員 亀山 勇氏

亀山(JQA): そうすると変化に強い企業になっていきます。変化に対応する体制を整えていると社会的な情勢が変わった時に、自社製品の優位性の変化に気づくことができます。こういうことも本当は社長だけではなくて、社員みんなで考えていければよいですよね。
生出: それは大事ですよね。私一人が考えていても、皆の意識に落ちていないと何かがあった時に対応できないですよね。
中村: リスクを察知して先手を打てるマネジメントシステムにするため、プロセスの中の判断基準、数字が持っている意味を明確にすることが重要です。マネジメントシステムは目標管理、PDCA、リスク管理、KPI、パフォーマンスが大事です。
ある一つの出来事を経営者が考えるとき、攻めも含めたビジネスチャンスと捉えるか、反面、リスクがあると捉えるのか、この両面を検討してマネジメントをどう運用していくかになります。
亀山: 最終的に企業風土をつくっていくことに繋がります。だんだん、企業が拡大していくと、社長一人の判断では間に合わなくなり、現場が主体性を持って判断していくしかなくなりますから。

― 規格の要求事項を満たすということ

ニュートン・コンサルティング
辻井 伸夫氏

辻井(ニュートン): フローチャートなど減量化された文書は、規格の要求事項を満たしていましたか。
亀山: そうですね、規格が要求する文書化するべきところが少し漏れていましたが、実はそれはあまり重要ではないです。漏れを確認するだけだとそれに意識が集中してしまいますので、何がどのような状態だとリスクがあるのかというところを審査ではみるようにしています。
中村: 今回の生出さんの審査は、マニュアルというものはなくなっていたので、運用のところで確認しました。
西島: そうですね、ただ、審査を通して、規格から漏れているところは指摘していただいて、指摘を受けたらその部分は検討しよう、基本的に規格にあっているかということは意識せずに、業務に即した役立つものをつくろうという、そういう取組みだったのですね。
中村: そういうことでしたら、審査員は逆に漏れがあることを意識してみていった方が良いのでしょうね(笑)
文書類が軽くなったことで、見直しを行いやすくなったはずで、むしろこれは良いことです。
A4 1枚で情報を伝えることが重要です。コンパクトでシンプルに伝えることです。

―トップの意思に沿っていることが、グットポイントの鍵

英: 個人的には、マネジメントシステムというと全てがスパイラルアップしていくためのものという印象ですが、現実的には全てがなんでも右肩上がりによくなる、ということは難しいのかなあと思います。環境も変わるし、顧客からの要求も変わりますし。
中村: 我々のサービスでも、パフォーマンスが上がりましたという報告があると、それって本当にいいことですか、と聞かなくてはいけません。
経営は、一面的に判断することができない。何かを伸ばそうとすると何かが縮小するかもしれない、そこは経営の意思に沿っているかをみる必要があります。
英: 審査員も大変ですよね(笑)
中村:

そのためにトップインタビューというものがあって、トップマネジメントが何を目指しているかを確認しています。

例えば、情報セキュリティを考えるとき、機密性を重要視すると極端なことをいえば、「怖いからインターネットにつながない」ということになります。しかし、インターネットが使えないことで、どのような機会が失われるのかということを考えないといけません。
そこは経営判断です。トップマネジメントが機密性の保持を絶対視するのであれば、その視点でみなければならないですよね。逆に、トップマネジメントの意思として、インターネットからの情報を上手く活用しようという意向があれば可用性を重要視するのでしょう……なんだか経営者は大変ですね(笑)

一同: (笑い)
生出:

今日は、お忙しい中ありがとうございました。貴重なご意見をいただいたので、今後の活動に大いに参考とさせていただきます。

「現場主導で現場が作り込む」「経営、マネジメント」「業務に直結したものを作り込む」
「無理にISOを意識せず、自分たちで運用管理する」「ISO規格は、改善点を気づくためのツールと考える」
こうした考え方のもとに、生出マネジメントシステムを運用し、これからも進化を続けてまいります。皆さま、今後ともよろしくお願いします。