包装のコトども

2019.08.27

『置き配』から覗く社会的イシュー

ここの所、何かと話題の『置き配』。

正式には「置き場所指定配達」のことだそうです。
物流業界に重くのしかかる「ラスト・ワン・マイル」問題への、
ひとつの有効なアプローチ、として期待されています。

…とはいえ、やっぱりちょっと、心配かも…

ホンネの所、皆さんはどう思っているのでしょう?
ある物流関係コラムで見つけたアンケートによれば、
この仕組みに不安を感じている人の割合はなんと…

『73.8%(物流ニュースサイト”Logistics Today”より)』

いやはや、やはり本格的な普及には、
まだまだハードルが高いというのが現状のようですね。

雑貨やちょっとした衣類などならともかく、
高額品や、飲食物などを屋外に放置するのは、
感覚的に躊躇われるのというのが自然かもしれません。

ところが、そんな日本国民の不安もどこ吹く風、
海の向こうのあの国では、
『置き配』がもはや常識となっているとか…

そう、アメリカです。

これには私もちょっと意外な印象を受けました。
現金の詰まった自販機が街角に立ち並ぶ、この平和な日本でさえ、
『置き配』には二の足を踏んでいるというのに、
盗難件数の多いあのアメリカでいち早く普及…?

『そうか、きっとEC先進国のアメリカでは、
盗難やいたずらを防ぐような画期的な仕組みや
IT技術が導入されているんだ!』
と思い、詳しく調べてみると、なんと…!

…やっぱり、めちゃくちゃ盗まれるみたいです。

『玄関盗賊(Porch Pirates)』という俗語が生まれるほど、
盗難が頻発する環境なのに、『置き配』自体は定着しているんですね。

でも、費用対効果を考えれば、
実はこれ、意外と合理的なのかもしれません。

至れり尽くせりの宅配サービスが常識の日本とは異なり、
アメリカでは、時間指定や再配達、
受取人への手渡しなどのサービスは全て『オプション料金』の対象。
時間指定をするだけで、7ドル以上取られるなんていうこともざら。

やっぱり、実際に『人を動かす』サービスは、
欧米では段違いにお金が掛かるんですね…
こんなコスト体系の中で、不在だからすぐに再配達、
なんてことが気楽にできるわけがありません。

それならばと、もう腹をくくって、
盗まれたらすぐに代替品を送り、
コストは保険で処理する、というわけですね。

不在のたびに再配達のコストを負担するよりも、
時折盗まれることは必要悪として受け入れた方が
手間もコストも抑えられる、という発想なのでしょう。

…背景を紐解けばある意味では納得の、
彼の国ならではの複雑なご事情でした。