包装のコトども

2019.10.16

タイスキにみる、アジアの物流事情

保冷用の発泡体も扱う関係で、
「低温物流」や「コールドチェーン」などのキーワードを追っていたら、

『タイで国内最大級の冷蔵倉庫が稼働』

こんなトピックを見つけました。

スワンナプーム国際空港からほど近く、
三温度帯(冷凍・冷蔵・低温)に完全対応し、
さらにはIoT技術も駆使したこのハイテク倉庫、
建設を手掛けたのは日本の物流大手、
センコーグループホールディングスだとか。
いまや低温物流技術と言えば、生鮮食品や医薬品の輸送に強い、
日本のお家芸のひとつなのですね。

そして総工費60億円を超えるこのハイテク倉庫の依頼元はなんと、
『タイスキ』で日本人観光客にも有名な、あのMKレストラングループ。
バンコクを中心に700店舗ものレストランを経営する企業です。

数ヶ月に一度、タイに出張に行くのですが、
外食の際に出てくる生鮮食品、とくに魚介類の鮮度に関しては、
いま一つという経験が多いのがホンネの所。
ただ、MKで食べた肉や魚介は、
日本の鍋料理屋などと比較しても、
遜色ない鮮度だったように記憶しています。

下記は数年前の資料ですが、
アジア圏では、平均気温が高いにも関わらず、
まだまだ冷凍・冷蔵食品文化が普及していないようです(棒グラフ参照)。
しかし所得水準の向上や小売・外食店舗の増加によって、
コンビ二や外食のユーザーが日々増加していることもあり、
市場の伸び率(折れ線グラフ参照)は欧米諸国をはるかに上回っていますね。
そう、ASEAN全体で4,000億円を超えるとも言われる、
巨大な低温物流市場が、今まさに産声をあげようとしているのです。

日本にいると、スーパーやコンビ二の棚の上で、
厳密に温度管理された食品を買うことが、
なにか当たり前のことのように感じてしまいますが、
新鮮で安心な食材が普通に手に入るということは、
世界的なものさしで見れば、とても恵まれたことなのですね。
そしてこの『新鮮で安心な食材』という素晴らしい『付加価値』は、
流通の黒子である、物流と包装が生み出しているわけです。

私たちは精密機器類の緩衝包装設計をベースとして、
企業としての歴史を重ねてまいりましたが、
物流や包装の世界におけるニーズは、
もちろん緩衝性能に関するものだけではありません。

保冷・断熱に関わるニーズも一つの巨大なマーケットですし、
そしてその周辺には、なかば必然的に、
環境性能に関するニーズが存在しています。
IoTやロボットと連動した機能的なマテハン系の需要も、
今後は加速度的に高度化してゆくでしょう。
そしてもちろん、低コスト化という巨大なニーズが
すべての底流に存在していることは、論を待ちません。

物流と包装に携わるということ=(イコール)
『ありとあらゆるモノの移動に関わること』

・・・そんな風に考えると、今、物流・包装の分野に求められているのは、
物流と包装設計に関する専門技術を高めつつ、
多様化するマーケットのあらゆるニーズに応えてゆくこと・・・
少し大げさに言えば、それは、

「プロのジェネラリストであること」

ということになるのかも知れません。