包装のコトども

2020.03.30

「風月同天」のBCP

テレビやラジオはもちろんのこと、
ネットニュースやラジオでも、
毎日のように耳にする『コロナ』『コロナ』『コロナ』…。

株価下落にFRBの緊急利下げ、高まる中国批判にアジア人差別、
そしていよいよ危うい五輪の行方、などなど、
どこを眺めても明るい話題が見当たりません。

BCPを担当している関係で、
あるネットニュースを調べていたら、

『マスクや支援物資を送った日本人の行動と「あるメッセージ」が、
 中国の人々の心を打ち、大絶賛されている』

そんな記事に出会いました。

『本当に感動した。ありがとう!』
『なんとも優雅で、教養があり、文化的だ』
『(今の状況に)ぴったりのメッセージだ、愛に国境なし』
『一瞬、涙が出た…』

SNS上では、こんな熱のこもったメッセージがずらり。
日本から中国へ、支援物資とともに送られた
「あるメッセージ」とは、
実は日本の仏教文化発展に深く関わるもの。

それは、支援物資の荷にプリントされた、
とある一節の漢詩だったそうです。

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『 山川異域、風月同天 』

(私たちの住む場所はそれぞれ違うけれど、
私たちは共に同じ風を聴き、同じ月を見つめている)

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この漢詩、約1300年前に天武天皇の孫の長屋王が、
唐の高僧・鑑真に宛てたものとされ、
このメッセージに心を動かされた鑑真が来日を決意した、と伝えられています。

当時の船旅は危険極まりないものであり、
鑑真は、日本にたどり着くまでに五度に渡る失敗を重ね、
弟子に先立たれ、苦難の中で自らも失明する不運に見舞われます。
そして齢66歳に至り、なんと六度目の航海でようやく日本の地を踏んだのです。

正しい教えを広め、乱れた世を平らかにする、
その無私の目的の為に、中国での地位や、
身の安全さえ犠牲にした彼の、
日本文化への功績は、はかり知れません。

歴史的にも、また経済面でも、今や日本と深く結びついた隣国。
政治的な摩擦や課題は山積すれど、
もはやおたがいになくてはならない、
支えあうべき存在であるのは、まぎれもない事実です。

米国のように、ウイルスの発生地である中国を非難するのは簡単ですが、
中国の大多数の企業や、一般市民は純粋な被害者であり、
むしろ支援の手をさし伸べるべき対象であるはずです。
そしてまた、巨大市場としてたがいに依存し合う関係性が壊れれば、
世界的な損失は、それこそ計り知れません。

世界全体が、国境を越えた巨大なマーケットと、
網目のようなサプライチェーン、そしてネットで繋がれた現代。
分断、差別、敵視、そして利己主義的な発想からは、
もはやなにも産まれないのかもしれません。

この詩に詠われるように、おたがいのことを、
『同じ風を聴き、同じ月を見つめる同胞』と捉える発想こそ、
環境問題や頻発する災害、
今回のパンデミックのような新たな危機に際して、
今、真に求められているように思えます。

私は今、自社の事業継続計画(BCP)の運用を担当しています。
今回のコロナウイルス対応においても、
ステークホルダーである企業様を訪問する機会を多く頂きます。

その度に、お客様、サプライヤーの皆様、
そして協力企業の皆様との関係性がなければ、
弊社の仕事は一日として成り立たないのだな…ということを痛感します。

自社の事業継続、という狭い発想にとらわれることなく、
おたがいをパートナーとし、支えあう『風月同天』の心で、
お客様、サプライヤー様、そして協力企業様と一体となり、
この未曾有の事態を乗り越えてゆく、
それこそが本当のBCPなのではないか…。

“COVID-19”

耳慣れない名前の、この小さなウイルスが、
そんな大きな気づきを、もたらしてくれたようです。